絵の具/
木立 悟
色が無くて
血で描いていた
緑の絵の具を
わたす手に触れた
春の花が
葉をちぎり
痛みに泣きながら
微笑み 差し出すようだった
血の枝に
緑の枝が重なり
血で描かれた太陽は
やがて乾いて黒くなった
絵の具と共に去ったひとが
羽となってほどけぬうちに
思い出にならない思い出を
紙に刻み込むことしかできなかった
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