突付かれ、切り落とされ、失われていく/鴫澤初音
 
屋上で一人外を眺めていると頭上後方を蝉のじーっと言う声が
ゆっくりアーチを描いていって、手すりでその声が
とまった。私の左の方だった。カラスに羽根をくわられていた。
じーっと、言い続けていた。カラスが蝉を足で押さえつけ、
最初の突付きを加えるまで、じーっと言い続けていた。
カラスが突付くと、クシャ、クシャという音がした。
その音が終わると、弱くなった声で、じーっと言った。
それからまた、クシャ、クシャと突付く音がして、
短く弱く、蝉がじーっと言った。
それからまた、クシャ、クシャと音がして、
何も聞えなくなった。
私はそちらを見ることができずに、
ただ、
クシャクシャ、じ
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