街/アンテ
9 街
なんにもない世界
を思い描けないのは
きっと
執着がない
せいなのだろう
高いビルの上から見渡した街は
とても静かで
どこにも変わったところがない
のは気のせいだろうか
空気がけむっていて
果てが見えない
消えるもの
留まるものの差は
なんだろう
手をのばせば届きそうな
雲の流れ
永遠にたどり着けそうにない
遠い街並み
ゼロ
かちっ
あたしの声が
またスイッチを押す
ずいぶん昔のこと
飼っていた金魚が死んだ
水槽の蓋の
すき間から飛び出して
床に横たわっていた
何度も跳ね
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