バオバブ/
亜樹
県北部の山間の畠では
正月すぎ頃から
収穫されないまま
放っておかれる
黒豆が群れる
実りすぎた黒豆は
収穫したところで
赤字にしかならない
農家は仕方なく
自ら植えた黒豆を
朽ちるに任せるのだ
黒豆は
枝ごと引き抜かれ
ひっくり返されて
乾燥された状態のまま
さしたる抵抗も見せず
何百と群れながら
沈黙する
延々と
延々と
逆さにされた黒豆は
どこか
バオバブの木に似ている
バオバブは待つるのみ畠の肥となるるその日を
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