砂の城の考察 #1/まーつん
1
ある想いを、紙に起こそうとすると、そもそも、何を考えていたのかが分らなくなってしまう。そんなことはないだろうか。
それは、砂浜に盛り上げた砂の城を、テーブルに移そうとするようなものだ。手に掬う端から、苦心して押し固めた城壁や尖塔が、ただのさらさらとした砂に広がってしまい、容易く原型を手放す(あるいは、無形という原型を取り戻す、といってもいい)。
もちろん、数字や科学の論文、会計報告書、楽譜といった、解釈に揺らぎが生じにくい言葉や記号の集合体もある。これらは数や物質、物理現象、金銭、音、といった、具象的な情報の詳述だ。だがここで取り上げたいのは、物語や詩、手紙や、個人的な会
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)