大阪文学学校体験記/室町 礼
 
1997年初夏のことである。
大阪の谷町筋にある新谷町第一ビルの扉を開いて中に
入るとちょうど奥から三十前後の美人が出てきたばか
りだった。
「すみません。大阪文学学校は何階にあるのでしょう
か」
腰を低くして尋ねると女はこちらを険しく睨んだだけ
で、返事もしないで階段を上っていった。
(なんだ)美人とはいえ険のある顔つきをしていた。
拗ねたような高慢な表情の女性、嫌いじゃないんだけ
ど人が礼をつくしてものを訪ねているのに無視するな
んて、珍しい人がいるものだと思った。

汗をかいて探し回り、ようやく大阪文学学校の教室を
捜し当てて中に入ってみると、新入生の歓迎会のよう
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