釣りをした日/番田
通り過ぎる船を見ながら、僕は釣り糸を垂れていた。正確に言えば、投げていたのだが。音を立てて船が通る度に、水面には波が立った。そして人は、淡々と辺りをジョギングで走った。夏も過ぎて、走りやすいだろう。この辺りには、僕のまだ若かった遠い昔に面接を受けたことのあった会社があった。奇妙な面接だった記憶。そこで、何を話しただろう。後日、不採用の通知が来た。暑かったので上着を脱いだけれど、風は冷たさをはらんでいる。上空から寒気が流れ込んでいるのだという。秋は春に比べて、そこまで、寒さを感じないけれど、そばで時折魚が跳ねた。人の来ない隙を狙って竿を振る。そうしながら、よく見えない糸を巻き、将来のことなどを考えた
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