きらめくものたち/由比良 倖
涼しい崖の下のような廊下。私はプラスチックの四角いキーをゆっくりと叩いている。白
い四角い画面に、真っ黒な電子の文字が連なっていく。ここから遠い街の光は、まるで琥
珀の中の物語のように見える。
目を瞑ると、今まで過ごしてきた夏が、ひとかたまりになって、私の身体を包んでいるよ
う。水槽の中の一匹の小魚のように、全身で全世界を生きていけたらいい。眼鏡越しの世
界は、ゆらめくような気持ちでいっぱいになっている。
……
柔らかな赤い空の下で、石鹸水の中にいるみたいに迷ってる、
「許して、」って言いながら、
電気の甘いノイズ、辛いノイズ、眠りのノイズが電線から垂れてくる、
空
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