秋のサイクリング/番田 
 
僕は時々自転車で隣町に出かける。そうすることで、色々なものごとを振り切るようにして、走っている。季節を木々の色や葉の色に感じ取りながら、自分の昔そこを歩いた幻影をぼんやりと、思い出している、僕はあれから何をしてきたのだろうかと。もう、同じ場所にあったはずだったラーメン屋の建物はない。自転車は走っていた。景色に何を探しているのだろう。通り過ぎた場所に感じてきたもののことだろうか。例えば、柵に絡みついたいくつかのツタの数々を。いくつかの、人々の、後ろ姿や、鳥。鳥はどこに行くのだろうかと思った。僕の知っている忘れかけた誰かの姿を見ることはあるだろうか。そのようなことを思い巡らせていた。そのような、流れる
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