メモ/はるな
軽くて暖かそうなコートを一枚着て歩くひとを羨ましく見ながら、厚ぼったい、そのくせ風の通るような洋服をなんまいも重ねてぎゅっと縮んで歩いてます。
二十日間も雨が降らないで、ぱりぱりと乾くような空気をしてます。電車の往き交いを見下ろして、昼間を過ごします。一日はあっというま、起きて、娘の髪を梳いたと思えば昼間、乾燥機のなかで熱くなった洗濯物を取り出してたたみ、そのうちに帰ってきた娘が国語の教科書を読みます。覚えている話がいくつもある。鬼の話とか海の詩とか。夜は少し長い。眠っているときも、生活をしている。あたらしい毛布の肌触り、加湿器のたてる水音、となりのうちの室外機が唸る。一日はあっというま、でも、人生は少し長すぎる。
たいてい眠りに入る直前に思い浮かびます。文章、五七五七七、思い出したかったはずの色々。そして、ああこれは大丈夫、起きたときに書きつければ、間に合う、と思って心強くなって眠ります。起きれば、もちろん欠片も覚えてない。
[グループ]
戻る 編 削 Point(3)