メモ/はるな
 


いくつかの枝葉をのこして、花を切っていく。もっと沢山の花を咲かせるために必要な処理だ。
そして、わたしたちはまた違う街へきた。

これまででいちばん短い期間での引越しだった。短い春と長い夏を過ごした、日当たりの良い(よすぎる)部屋を空にして、スーツケースを引っ張って。時速300キロで、ため息が引き伸ばされていく。
わたしの春と夏、むすめの春と夏、夫の春と夏。六つの季節が遠のいていく。それもまたそれぞれの距離で。わたしはついにまた、自分がどこにいるのかよくわからなくなってしまう。

いくつかの植物は一緒に引越してきた。
生きのびるために、すこし葉や花を落として、土をぎゅっとかためて。
まえよりも日差しの減ったベランダで水をやった三日めの朝、緑は冴えてゆれる。

これから理解していく。
遅くても愚かでも、そうするしかない。
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