日記、思ったこと/由比良 倖
10月15日(土)、
少し遠くの図書館に行って、小説を借りてきた。陽だまりは懐かしく澄んでいた。小説からは、少しレモンの匂いがした。
(小雨の朝とは違う昼の光や、少し遠くに来たという身体の浮遊感とか、風が染みることとか、今また空に浮かんでいる月の遠さとか、夜の滲み具合とか、そう言うものが、単に今、頭の中に書き込まれている情報なのだとは思えない。)
カーテンを開けたままの部屋に帰宅したら、とろとろと部屋に流れ込んでくる夕闇に、異様な既視感を覚えた。心の引っ掛かりにぼんやりしている内に、すぐに部屋が暗くなってしまった。心の中に、何かちかりと光るものがある。何にも思い出せないことに、虚しさと孤
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