日差しと思い出/番田 
 

ベランダに外用の椅子を置いたのだ。椅子は、イケアで買ったものだった。東向きの部屋のひとときの幸福を、その、赤い椅子で確かに感じたのだ。その日は部屋の中にいるには日当たりのよすぎた日だった。僕は曇りガラスの向こう側にあるものをぼんやりと見ていたのである。見ていたのは過去の記憶の中にだけあった風景だったのかもしれない。10年前に面接した会社の風景であったりを。あれは原宿の一角にあった小さな会社だった。枯れ葉の舞い落ちていた通りの喫茶店の近く。僕は職安の紹介状をいつものバックの中に入れていた。時間を潰すためにそこでコーヒーを飲んでいたのだ。周りには、このあたりの住人であろう多くの中年の女性が座ってい
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