可愛い女の子たち/幽霊
 
朝日がまた砂時計をひっくり返す。お茶碗に盛られた白ごはん、味噌汁、鯖の塩焼き、目玉焼きにサラダ。こんな朝ご飯は脅しだ。ひどく脅迫的だ。
 駅のホームにベンチがあって、サラリーマンが二人座っている。一人は中年男でスーツを着ているのだが、炭鉱から這い出てきたようにくたびれた男だった。もう一人の顔とスーツには皺一つなく、ポケットには予備のボタンが気付かれずにまだ入っている。そうして若いサラリーマンは中年サラリーマンの腕時計を覗きこんでいた。自分の腕時計と交互に見て、それからリューズを回して時間を合わせている。
 口論も聞こえてくる。旅行鞄を持ったカップルが、なにやら観光スケジュールで揉めている。男は
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