星座・定着/はるな
指を頬をべたべたにしながらバターを塗るむすめの横顔を見て、なんだか星座をおもった。
美しい空気、美しい景色、愛の横顔。
崩れそうに積み上がった漫画本、いくつものポーチに鞄、色鉛筆にマーカーペンに紙テープ。それがぜんぶ別々の色や柄でそこらじゅうに散乱しているので、もちろん部屋はさわがしい。おまけにわたしの趣味である植物たちもこの寒さで部屋に引き入れているから、すこし湿度まで高いようだ。それでも、朝は美しい。
星座なんていくつも知らない。そもそも夜があかるくて、星なんてちゃんとみえない。
秋に夫と、むすめと行った旅行で、ほとんどはじめてきちんとそれらをみた。
冷たく、暗く、明るい夜、空はちゃんと黒くて、湖のすぐそばで、わたしたちは見た。
美しい空気、美しい景色、愛の横顔。
それは東京の朝にも存在して、だから星座をおもった。
わたしたちはまだなにも知らないとおもう。それかぜんぶ忘れてしまう。
ほんの少し思い出すとき、この体に生活が定着する。
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