つかの間の出来事/番田
僕は生きているのだという、実感もなく。公園の木が懐かしい。年賀状の入っていた子供の頃の家のポストが。僕は、ときどき部屋でCDをかけていたけれど、今年もぼんやりしているうちに終わってしまいそうだった。時々、バルコニーの椅子に座っていると、眼下を走る電車が見えたり、坂の向こうからはバスが曲がりくねって降りてきたり遠くを走る車が見えた。受験生でも無い限りは、このような時間は、誰もに、僕は約束されていたりするのだと思うのだ。目黒川を歩いているときに見かける、それは、例えばペット専用の床屋であったりもする。もしくは清流に似た下の方の底に見える白っぽい砂なのかもしれなかった。僕は昼頃に、倉木麻衣のCDをかけてみた。僕は、それから、斉藤和義のCDを。誰にでも、何かに夢中になっていた時代というのはあったのかもしれなかった。
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