鬼/板谷みきょう
貧乏村からちっとばかりの山深いところ。
いつの頃からか棲み始めた鬼。
棲むのも当たり前
そこは、大きな声では言えないが姥捨て山。
昼間のうちに、一人捨てると、その晩は、耳ざとければ、はっきりと、叫び声が谷々をこだまし、村にかすかに響き渡る。
でも、それについては誰も何も語らず。例えば子どもは、寝ているし、よしんば起きていても、子どもの耳には何も聞こえん。
炉端で遊びの真っ最中。父母は、耳につく声を忘れようと、ただもう聞こえん振り。
残っているジジババたちは、一様に目を閉じ溜息をもらす。それでも、それぞれの胸の中には、いつも同じ不安がつきまとっていた。
それは、人肉の味に誘われて
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