フランスの暗闇で/番田
昔、僕は四月に、マルセイユを訪れていたことがあった。銃を持った軍人とすれ違うほど治安が悪いとされる街に滞在し、経由しないことには、モナコやカンヌといった見どころの多い街にたどりつくことはできなかったからだ。僕は一旦空港で降りると、来るのかどうかもはっきりしない高速バスが来るのを、ぼやけた夕暮れの空の下で待っていた。失業中だった僕の心の中にも似ているような気もさせられた風景だったが。僕はそこで待っていると、バスはやがて目の前にやってきたのだ。そして、山に浮かんだ光の流れる風景の中にいた。僕は疲れ果てていたのだが。
街についた僕はさらに宿を探すのに苦労させられていた。暗がりの中で、見知らぬ女
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