故郷と多摩川/番田 
 
昔僕は中学の頃、部活以外で夢中になっていたのは釣りだったということを、時々思い出している…。僕は、異性と遊ぶということでも、電気式のギターをかき鳴らすことでもなく、一匹の魚を釣り上げるということに没頭していた。僕がなぜそんなことに夢中になっていたのかは全く思い出せないが…、当時、あまり話すことのなかった他のクラスの同級生でも、釣りを通してでなら話ができていたことを時々思い出したりもしている。そして、運がよいことに近所に存在していた広い沼や川に、感謝の念を懐きつつ、その、遠い果てまで広がっていた風景を東京の狭い部屋にたたずむこの目の奥で、確かに、見つめていた。


最近の僕はというと、多摩川で
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