善行についての疑問/道草次郎
ああつらいと叫ぶ。そうすると、どうした!と駆けつける。一回や二回なら駆けつける。それがずうっとつづくとする。その場合、駆けつけないこともある。叫んだ人間はその事で相手をなじるかも知れない。そしてなじられた人間は、やがて相手を憎むようになる。いつか殺してしまうかもしれない程にだ。この場合、どちらも相手に期待し自分にも期待している訳だが、自分への期待に強く苛まれるのはどちらかというと駆けつけた人間の方だ。
つまり、善行は小さいほどいい。それを言いたかった。なぜならそれは負債だから。そういうことは近所の気のいいおじさんなら大抵知っている。
ぼくはニーチェを全然知らないのだが、ニーチェはこの先
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