紅葉のスケッチ/道草次郎
今朝の秋空はどこまでも快晴で浮かべる雲一つないようです。
杉と松は常緑樹。銀杏はもちろん輝く黄金色です。プラタナスは所々にうす緑色を残して、全容はほぼ黄色く色付き終わっています。
人家の塀に絡まる蔦もうつくしく紅葉しています。こじんまりと刈り込まれたドウダンツツジは、鮮やかな赤を通り越し、すでにいささかの黒みすらその兆しとしています。
イロハモミジも楓もいまだ鮮やかな赤と黄とに染まりきって、朝陽に照らされています。
橋から盆地を取り囲む山々がみえます。頭に雪を被った奥山はひっそりと息を潜め、里に近い山肌には錦を織り成す色とりどりの景色が広がっています。点在する松に彩りを添える紅葉樹はさながら水草の中を泳ぐ錦鯉のようです。そして、今朝の空色は秋のパレットに一番よく合うのは我だとばかりにとても静かです。
冬の足音はまだ遠くに聴こえるばかりです。
秋はみずからのその美しい作品を山に里にそして街に、今しばらくは展覧してくれるつもりのようであります。
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