腐れ華/道草次郎
 
苦しみの只中にある時、人の辛さを被う布となり底へおりる意識の錨となるのは安易、だという事は、なかなか忘れ勝ちだ。困難は、苦しみが拭われてから始まる。周囲を見回した時にこそ、初めて顕現する。霧が晴れた庭に、醜い毒の花があっても、お前の霧も、別の晴れた霧にとっては毒の花に過ぎなかったのだ。お前はその毒花から目を背けてはならないばかりか、全く、今度はその毒花の中枢へと自らを没入させなければならない。そうしたらそこに、呑まれず、安定した心を保ち、細心の注意とともに刻刻に息をころす意思を加える必要がある。この恐ろしい時間に堪え得る力を、お前は索し求め続けてきた。その力の根ざす所に美を見出したら自分は堕落する
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