黄金挽肉炒飯殺人事件/墨晶
 
          短編

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「何喰おうかなあ、先輩は何にしますか」
「俺か、俺は、チャーハンだ・・念のために云うが、『俺の名はチャーハン』と云ってるんじゃないぞ」
「・・わかってます・・」

 本日、一軒目の顧客廻りが済んだ二人は、小さな中華食堂で昼食を摂ることにした。

「僕もチャーハンにしようかなあ」
「俺に合わせる必要はない、喰いたいものを頼め」
「いえ、何となく先輩が頼むチャーハンなんだからよっぽど美味いんじゃないかなと」

 眼鏡の奥の全く笑わない三白眼とやや吊り上がった左側の眉が、この先輩と呼ばれた背の低い肥った男の、腹の裡を量り得ぬ倦怠とも達観とも
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