二階の兄/墨晶
掌編
両親たちがまた罵り合っている
このふたりはもう向き合う事がないのに
まだ一緒にいる
おそらくどちらか先に死ぬまで罵り合うのだろう
肉親が優しかったことなんて
なかったな
あたしは夕飯を食べると二階にあがった
隣のお兄さんの部屋を覗く
あたしのお兄さんは
相変わらず壁の方を向いて寝ている
あたしがお兄さんの部屋に来る様になったのはいつだっただろう
お兄さんは昔からずっと壁を向いて寝ているので
あたしは顔を未だに見たことがない
でも時々あたしの話を聞いて貰っているのだ
お兄さんは返事をしてくれないけれど
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