二階の兄/墨晶
 
 
          掌編

両親たちがまた罵り合っている 
このふたりはもう向き合う事がないのに 
まだ一緒にいる 
おそらくどちらか先に死ぬまで罵り合うのだろう 
肉親が優しかったことなんて 
なかったな 
あたしは夕飯を食べると二階にあがった 
隣のお兄さんの部屋を覗く 
あたしのお兄さんは 
相変わらず壁の方を向いて寝ている 
あたしがお兄さんの部屋に来る様になったのはいつだっただろう 
お兄さんは昔からずっと壁を向いて寝ているので 
あたしは顔を未だに見たことがない 
でも時々あたしの話を聞いて貰っているのだ 
お兄さんは返事をしてくれないけれど 

[次のページ]
戻る   Point(3)