気が付いたらボロ雑巾のようにベッドに転がされていた/山人
 
 四月二十三日、若い女性看護師Aの説明を受けながら、跳ねる川魚のような指先で打つキーボードをぼんやりとみていた。柔らかい声で適切に私の話を聞き、それを一切漏らさずキーで打ち込んでいる。血液検査の注射針も、するっと柔らかく私の静脈に挿入された。穏やかだが機敏で手際よく、看護師という仕事をよく熟知しマスク越しだが魅力的な女性だった。そんな彼女だが、発する言葉には仕事をやり遂げようとする意志が感じられ、十六時半にシャワー室の予約をしておいたから下の毛を自分で剃れと言う。
 昼には病院食が配られ、粗食を味わった。如何に今まで贅沢をしていたか、如何に余分な嗜好品を食らってきたのかがわかる。人が命をつなぐた
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