欠けている/ブッポウソウ
ーこんなところ欠けていましたっけ。
机の脚の角っこが欠けている。その人は不思議なものを見るようにその欠けた部分を見る。いつから欠けていたのだろう。机の脚の角っこが木の目に沿って少しではあるが欠けている。その人は欠けたところに触れてみる。新しい木の肌が ーといっても古い机ではあるがー そこだけのぞいている。その人は神経質なたちではなかったので欠けにこだわるものではなかったが、運んだときにぶつけたのかも知れない、本当に安い業者だったから、というぐらいには思った。
ーあのお部屋にはちょっと場所ふさぎでしたね。
あの人は、床に座るほうがいい、という人だった。その人は椅子と机のほうが足腰が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)