ハロウィンの夜、木星は見えているか/帆場蔵人
陽が次第に落ちてゆるゆると薄暗くなった町を歩いている。信号機の赤で立ち止まる。まだ青が潜むうすぐらく滲んだ空に爪のような三日月が覗いていた。じっ、と真上を見上げればそんな空しかないのだ。雲はどこか、星はどこか、闇もない。私はそこに落ちそうになる。まるで流れが澱んだ淵のように見続けてはいけない、ひろがりだけがあった。ガードレールをつかみ金属の確かさを錨にして、私は眼を閉じる。夕餉の匂い、車が道路を削っていく音、空気のながれが私を包んでいる。
ゆっくりと上向いたまま、眼を開ければ三日月の爪先がこちらに向いていた。そしてその傍らに星があった。あれは木星だよ、と私の背後を走り魔法使いの仮装をした少年
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