信長の「敦盛」/日比津 開
 
舞などまったくできない私だが
一つだけ舞いたい作品がある
織田信長が桶狭間の戦いの出陣前に
舞ったとされる幸若舞「敦盛」だ

「人間五十年 下天の内をくらぶれば
夢幻の如くなり
一度生を得て 滅せぬもののあるべきか」

これだ
詞の内容は、人の世の五十年の歳月は
下天の一日にしかあたらない
夢幻のようなものだ、ということ。
無情を唄う、静かで内向的な舞のように
感じるが、これを信長がどう舞ったか?

映画やドラマで演出が違うが、たぶん信長は
『死んでやれ』と悲愴な決意を固め、気力を
振り絞った見事な舞だったに違いない
尾張に侵攻してきた敵の今川義元の兵力は

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