かしゃん星/田中修子
 
僕の体の中には沢山のコップがあって、塩辛い青い涙や大輪の向日葵みたいな喜びや夕日の落ちる切なさがそれぞれに詰まっている。コップは多分千以上あってそれぞれの感情を綺麗に整理してくれるんだ。必要なときに必要なだけ涙や、笑みを供給してくれて、その中には君への恋心もちゃんと入ってる。恋心の色はとても複雑だよ、暖かくて冷たく、まばたきごとにうつりかわるよな金色まじりの夕暮れさ。

だけどなんでだろうね。最近君へのコップがわけもなく暴れだすんだ。いちばん薄玻璃のに選んで入れたのがよくなかったのかな。たとえば君が煙草を吸っているとき、僕の体にしなだれかかってくるとき、先にひとりで眠ってしまうとき、体の中から
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