小説家小説/水宮うみ
紙山文章は書きあぐねていた。小説のネタが思い浮かばないのだ。
気分転換に積読している本でも読もう、と積読本の山を物色していると、ある作家の私小説が目に留まった。私小説は書きやすいとよく聞く。文章は思う。そういえば、私小説らしい私小説を書いたことがない。だが私小説を書くのは何となく恥ずかしい。しかし他にネタもないので、文章は早速小説家についての小説、つまり私小説に少し近いものを書き始めてみることにする。題名は、とりあえず仮に『言葉の降る朝』とした。
『私は文字。山本文字。小説を書くのが趣味で、ネットに作品を投稿したりしてる。文字は文字を書くのが好きなんだな、なんて、半笑いでよく言われる。から
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)