一行/水宮うみ
私は今、最初の一行を考えている。
詩を書こうとしているのだ。最近、詩が書けないのでそろそろ書きたい。
いつも詩が書けるときは、良い一行を思いついた時だ。
詩を書けるような、良い一行はいずれ見つかるだろう。しかし本当のところ、それは私が欲している一行ではない。
詩を書けるような一行ではなく、それ単体で完成している一行。
そんな一行を、ずっと探している。いつかそれが、見つかったなら。私はそれを、一行だけの作品として提出するだろう。
たった一つの数式が、様々なことに利用できるように。たった一人の人間が、歴史を動かしたように。そんな一行を、見つけられたらいいなと思う。
一行について書くのに、十行ほど使ってしまった。一行を書く為には、それだけ書かなければならないということなのかもしれない。
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