どこに居るの、沙織。/ホロウ・シカエルボク
 

 その建物について、詳しいことは何も判らなかった、その土地を流れる大きな川の、河原から何も無い野っ原へと続く坂道に沿うように建てられた平屋造りで、右側の端に川を目指しているかのように突き出された正方形の部分があった。要するに、真上から眺めると反転させたLの字だった。突き出された部分は厨房施設で、そこから、角を曲がったところに浴室、それから浴室とは反対の端の玄関に至るまでに、四つの小さな部屋があった。客室というよりは、宿直室が並んでいる、という印象だった。玄関のところは土間になっていて、そこに石造りの洗面台があり、6人ほどがそこで顔を洗ったり歯を磨いたり出来るようになっていた。手洗いは玄関を出た
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