インターネットの交差点で待ってる/水宮うみ
 
ある雪の日、名前のないわたしが名前のないあなたを待っている。
「吾輩は神である。名前はまだない」なんていうしょーもないことを言ったら笑ってくれるかなとか思いながら待っている。
待つっていう、なんだか特別な休み時間。そんなときにぐるぐる頭を回して、ふふっと笑ってくれるような言い回しを考える。思いついたらメモ帳にメモる。
あなたはマジシャンでお笑い芸人でサムライで料理人で、どこにでもいるかけがえのないひとつの大切ないのちで、男の子でも女の子でもない。
なんたってわたしの話を一回はちゃんと聴いてくれるところに惚れた。
思春期になにもかも喪って、それでも残った名前というもの。なにもかもを喪った次の日に、「わたしのなかに残るな!」って言って名前をゴミ箱に捨てた。
あなたはわたしのなかに居る訳じゃないから、わたしが無くなってもあなたは残る。
そのことが、わたしを安心させる。無くなるつもりはさらさら無いけど、わたしの外に好きなものがあるってことは、神様にだって秘密の生きた証だ。
生きてる右手と生きてる右手でハイタッチ。その音が、白い世界に確かに響く。
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