ばらのこと3/はるな
 

薔薇がそらを向いて開き、まちの花盛りは終わろうとしている。連休の留守から戻ったら、好きだったなにわいばらの花はひとつもなくなり、花弁さえどこかへ行ってしまった。なつかしいあの清廉な白。
来て半年になるここは空の広い住宅地で、だから庭のある家が多い。すこし前までは花水木、ライラック、藤の花がきれいだった。名前のわからない花々はもちろんもっとたくさん。あるいは冬を越してなおいきいきとしたシクラメンも。駅前の公園の花壇(段々畑みたいにして、四段か五段、斜面につくられている)の薔薇もつぎつぎに開いた。赤やオレンジのグラデーション、はっとするような黄色、レトロなピンク。そのあいだにたぶんカモミールが這
[次のページ]
[グループ]
戻る   Point(3)