轍のこと/はるな
 

坂の多いところに引っこしてきて二月になる。暖かすぎる冬にもようやく雪が降った。じきにみぞれに変わって重たくぬかるむ轍をばちゃばちゃ言わせるのが楽しいらしく、膝の下あたりまで濡らして娘があるいていく。
次の春がくると娘は二歳になり、その少しまえにわたしが二十八になる。娘と来た二回の春夏秋冬はどれも美しい季節だった。もちろん今も。背のひくいわたしでさえかがまないと手を握れなかった時期はすぎて、いまはそれも振りほどいて走っていく。もちもちした玉みたいな走りかた。ときどきしゃがんで目線を合わせると、あんまり見えかたが違っておどろく。そうして思う、娘をとおしてわたしをすることはできないし、わたしをとお
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