モグラ/もり
「都会にはもう、モグラがおりませんが、
聞きたいと言いながら耳を塞ぎ、
見たいと言いながら目を伏せる、
そんな輩が多いので、
それは土から出てきたモグラなのかと思えば、進化とは悲しいもんだ、などと
真っ暗な車窓から
そう思わずにはいられません。
それでも
田舎では未だにモグラが
干して売られていたりする。
そのことに私は甚だ遺憾でありまして・・・」
『地下の会』にも飽きはじめていた。おれは会長に体調不良を訴え、軽く頭を下げながらホテルを出た。
駅まで向かう途中、四つ角の煙草屋でマスクを取り、セブンスターをくゆらせる。店主のおばさんはテレビを凝視している。またどこかで誰か
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