いわしの骨からあげ/そらの珊瑚
 
海辺の街で育ったので、食卓にはよく魚があった。
その中でもいわしは定番で、母は何十匹も小さないわしをさばき、わたしたち姉弟三人は刺身が大好きで、先を争うようにそれを食べた。
その際に出るいわしの骨を母は捨てずに唐揚げにした。
ただ油で揚げて、塩をふりかけただけのそれは、酒のつまみには最適なのだろうが、子どもには不人気だった。
そこで母は「ひとつ食べたら一円あげる」というきまりごとを作った。
そのたびに、こずかい欲しさに我慢して十個は食べただろうか。
けれどじっくりと焦げ茶色に揚げられたそれは苦々しく、不味いものだったことに変わりなかったが、あの頃のわたしは想像すらしなかっただろう、数十
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