左右非対称/こうだたけみ
諸手を振って、天仰げ。頭の上つねに青く、遮るものなど何もない。ひたすらに振れ。何のためかもすでに解らなく、けれど無心に振りつづける。涙を流す姉さんが、「万歳、万歳」と言って、何処も彼処も感染症の菌の繁殖するさまを電子顕微鏡で見るように、一つ所から「万歳、万歳」と広がる。
うねる集団の声は怒っているあたしを見事に無視して、怒りに任せて乱暴に振り回したあたしの右手が手首ごと、飛んだのだ。ゴトッと落ちた右手を左手で拾うと、昔からあたしとは別の生き物であったかのように、それだけで生きていこうとジタバタやる。あたしの血と肉でつくられた部分でしかないくせに。一層苛立ちを覚えたが、あたしの怒りなど誰も解っ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)