チャルメラについての考察/迷亭うさぎ
 
実際のところ、チャルメラは愛されている。

ある袋麺が話題になったとき、人々が口々に叫ぶのは「サッポロ一番」だとしても。

おふくろの味を大切にする男性が、そのことについて彼女に告白する時の緊張感。
チャルメラへの感情はそれに似ている。
幼い頃大切にしていた石ころのような、自らの本質を曝け出す感覚だ。

人々の奥底に眠る郷愁が喚起されたとき、チャルメラ戦争は勃発する。
スーパーからはチャルメラが消え去り、配達員はチャルメラのどっさり入ったダンボールを抱えて翔ける。

そうなってしまえば、私たちの小さな石ころは地面の砂利と同じになる。大勢の人に踏み均され、やがて埋没していく。

つまり、私たちは思い出の石ころを守るために他の袋麺への愛をさけんでいるのだ。
もしチャルメラにとって代わる袋麺が現れたなら、石ころがただの石ころであると明瞭になったとき、私たちはこう叫ぶだろう。

「チャルメラが一番だ」
戻る   Point(0)