Miz 5/深水遊脚
 
 冬の陽射しはなにか暖色系の粒子のようだった。体全体を引き締める寒さを、ほどよい負荷にしてくれる繊細さで頬をあたためた。枝の枯れた木々が覆う公園の歩道を抜けて広場にでると、水仙の花が一面に咲いていた。風は穏やかで、かつての記憶に向き合うことが素直にできそうなコンディションだった。あまり向き合いたくない記憶なので、この日がこんなに穏やかだったことは運がよかったのかもしれない。それでも思い出すのには勇気が必要だった。そしてその何倍もの勇気が、これから会う人と話をするためには必要だった。お墓参りで会うことが時々あったので世間話程度には言葉を交わしていた。お互いの身の上も大体察していたと思う。今日は少し突
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