少年のこと/求愛星団 高森学園
 
米原でつかまった少年を擁護するつもりはないが、気持ち、わからなくもない。私なんかはなにもやらないまま成人しちゃった。二十歳になるまでに彼流のやりかたで国家みたいなもののスケールとか実感とかを感得できたことには羨ましくさえも思う。彼は殺人を行ったわけではない。私個人としての悩みとして、この世に生きていて、リアリティがない。これに尽きたのが十代。二十代になって選挙に行っても働いても年金を払ってもなにかごっこ感が払拭できず、この国家に、世界に生きているということが体得できない。アイデンティティーという言葉が昔流行ったが、そこにこの列島というものを飲み込まなくてはどうにも生きている実感に欠ける。カラオケボ
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