散文 【 緑病 】/泡沫恋歌
私はかつて[緑病]と呼ぶべき奇妙な病気に罹ったことがある。
それは十八歳くらいの時で、高校を卒業して初めて社会人となって働き始めた頃のことだった。
なぜか緑色に魅かれて、服も靴もバッグも帽子も身に着ける物がすべて緑色になってしまったのだ。決してセンス良くはない、奇妙な緑色の娘にしか見えないだろう。
どうしてあれほどに緑に一色になったのか、今もって謎である。元々さほど好きな色ではなかったのだが、当時はあの色に癒されていたのかも知れない。
高校から大企業に就職して、機械の部品の中に組み込まれた歯車みたいになって働いていたら、半年の間で約六キロ痩せてしまった。仕事がキツイというよりも、人間関係や
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