詩を書く/游月 昭
 

 私のような、ろくに文章も読めない、ろくな文章も書けない者が、詩などいう物を書いている。何故書くのか、といえば、おそらく脳ミソのどこかにある、詩の世界に通じる扉を、私の誰かが開くと、黒い闇の手が伸び、私の全てを掴み、行きたい所までタダで連れて行ってくれるからある。
 詩を書いている自分の手元が見えていない訳ではない。その時私は、私と二手に別れ、(誰か、すなわち)裏側の私が時空を越える旅に出るのである。
 もともと二人は同じなのであるから、携帯電話で逐一報告せずとも、表の私は、裏の私が旅する様子をあたかも自分が旅しているかのように詩に書いていくのである。もちろん、この文章は、裏側の私である私
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