ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
 
 この本を読み終わった人間は必ずや、辛い苦い思いを味わう事だろう。作者のミシェルウェルベックは、まるで、現実の僕達の醜い部分を僕達に無理やり見せようとしているかのようだ。僕達はこの書物を読んだら、沈黙しなければならない。そして、現代人がいかに愚かで滑稽で、悲しく情けない生き物かという事を心底痛感するはめになる。『セカチュウ』で涙を流した人がこの書物を読んだら、どう感じるだろうか。多分、本当の書物ーーいや、本当の悲しみというのは僕らに涙すら許さない辛いものだという事を痛感するに違いない。まあ、セカチュウの読者はこの本を読まないだろうが。


 この書物は現代人の『悲惨と滑稽』を描いていると僕は
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