混迷錯雑した小説論/yamadahifumi
 


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 一般的には、小説の方が詩よりは読むのは簡単である。また、批評よりも小説を読む方が簡単だ。そして、出版量で考えても、詩や批評より小説の方が圧倒的に多いだろう。
 

 だが、書く側からすれば事情は異なる。僕は小説というのが言語芸術においては一番むずかしいと思っている。だが、先に言ったように、読む方においては、小説が一番楽だ。そしてこの関係というのが、おそらく僕達に対して様々な誤解を生んでいるように思う。少なくとも、僕にとってはそうだった。例えば、僕達は夏目漱石やドストエフスキーは普通に読む事ができる。それ
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