夜更けの紙相撲 五月の羽/そらの珊瑚
昨晩の月は絵に描いたような朧月だった。
まるで大きなオブラートに包まれたように
柔らかで幻想をまとった月だった。
粉薬にオブラート。
昔、ありましたよね? 紙の箱に入ったうすい半透明の、あれ。
むせないように、苦くないように、気遣ってくれる、あれです。
オブラートの成分の何%かは優しさで出来ているのだと思う。
体のなかの水分でゆっくりと溶け出して、さあ、どうぞというのだろう。
さあ、どうぞ。
オブラートに包まれた月の下、けたたましい蛙の鳴き声が響き渡る夜でもあった。
命短し、恋せよ乙女。恋の時間は短くて、パートナー探しに我さきにと叫んでいる。
でも鳴くのはオスだけだそう
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