聖徳太子/竜門勇気
 

近所の裏山に勝手にシェルターを作成しはや三年。
木の実を拾い、小川のせせらぎで口をすすぎながら命をつないでいる。
時に朽ちて倒れたブナの大木の上に腰を掛け詩を口ずさみ、自然はいかなるものにも平等であると悟ったようなことを思う暮らしだ。
木の実を拾い、小川に口づけをする、そして詩を紡ぐ。
二年を超えた頃には口ずさむ言葉は言葉であることを辞め、緩んだ弦を揺らすような音になった。
その頃からか、あるいは以前からそうであったのかは分からないが私は人の言葉というものが遠くはるかに霞む遠景のように思えて仕方がなくなっていた。
それが記憶の中で私に話しかける声は呪詛のようでもあり、念仏であり、異
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