二十代/岩下こずえ
 
  線路のレールのうえを、落っこちないように両手でバランスを取りながら、歩いている。

 そのまま振り返って、「どう、上手いでしょ?」なんて誰かに言ってみたいが、あいにく私

 はひとりだ。私はただ振り返る。そして、荒野の彼方の、すっかり小さくなってしまった街

 を、じっと見つめる。

  今までは、皆と同じように、列車に乗ってレールのうえを走っていた。その旅中では、

 美しい景色が何度も見えた。悲惨な戦場の横を通過したこともあった。そうやって私は、皆

 と同じように、色々なことを学んだ。やがて、最後の駅。皆はそこで降りて、それぞれの場

 所へと散っていった。
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