二十代/岩下こずえ
線路のレールのうえを、落っこちないように両手でバランスを取りながら、歩いている。
そのまま振り返って、「どう、上手いでしょ?」なんて誰かに言ってみたいが、あいにく私
はひとりだ。私はただ振り返る。そして、荒野の彼方の、すっかり小さくなってしまった街
を、じっと見つめる。
今までは、皆と同じように、列車に乗ってレールのうえを走っていた。その旅中では、
美しい景色が何度も見えた。悲惨な戦場の横を通過したこともあった。そうやって私は、皆
と同じように、色々なことを学んだ。やがて、最後の駅。皆はそこで降りて、それぞれの場
所へと散っていった。
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)