「遮断機と渡り鳥と休日の月」/宇野康平
日曜の休日、遮断機は私の手をとって踊る。
黄色と黒の手を肩にかけようとするがスルス
ルと抜けてしまう。誰もが寝静まったころに
始まった踊りはいよいよ激しさを増していく。
心音の高まりは遮断機のサイレンと混ざり合
い、溶け合う。遅ればせながら到着した渡り
鳥は緊張で身体を震わせている。
欠けた月は透明な目を私と渡り鳥とに向けて
いる。その、クレーターで歪んだ微笑みに触
れはしないのは月を愛し過ぎた太陽が暦を支
配しているせいだ。
残酷な太陽系の父は、イキモノのために僅か
ながらの時間を与える。昼と夜を繰り返すよ
うにイキモノは死んでは生まれを繰り返す。
それは全て月を慰めるため、幾度も繰り返さ
れる何億年の孤独を紛らわすための遊戯であ
った。
《劣の足掻きより:http://mi-ni-ma-lism.seesaa.net/》
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