凹馬石遺稿/黒川排除 (oldsoup)
 
眼鏡の水滴外して見るぼやけて星空

雨に青い花畑は誰かの記憶

まろき我が妻は蛙の父の目だ

遅れて来る 古くさびれた息 谷溶け

鍵穴に最後の留守を告げてゆく

フラスコから身を投げ寺の鐘を打つ

ピリオド発光内側から蝋燭の火がある夜

木琴が好き放課後の音楽室

花の緑を留めおく睫橋の上

谷底に落ちたしるしの頭巾深く

砂分けた路面が溺死者の軌跡

茎あれば折ってこの世にあれば吹く

脱走して豪雨を見上げている駝鳥

コルク栓探す目に風船吸い寄せ

別冊を暗唱しつつ掻きむしる

目下の公園触れることすら緑になる

ポスト冷ます潮風、震えている

光るものは太陽以外のブローチ胸に

傾く通路に並ぶ女らの恥じらい摘む

金具バラバラと落とした空手に草原を抱えにいく
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